机上論人間

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五月雨を集めて早しラグラージ

もしもライバロリの中身が村上春樹になったら

もしライバロリの中身が村上春樹になったら

 

「はいどうもライバロリです。今回は~」

 

人気Youtuberならそれぞれ個性的な挨拶の一つや二つは持っているが、僕は特別オリジナルな物を作ろうとは思わない。今から急いで作ったところで再生数が極端に増えるわけでもないし、無理やり押し出していったところで視聴者からのウケがよくなるとも限らないからだ。三年前にオリジナルキャラクターの『バー』を盛んに宣伝してみたが特に意味がなかったその二の舞になってしまうのがオチだ。ペットボトルのキャップを口で開ける、それくらいが僕の工夫できる限度だ。

 

僕は相手のパーティーにいるポケモンをいちいち読み上げたりはしない。ポケモン対戦実況動画を見ている視聴者ならアイコンを見た瞬間にそのポケモンが何かはわかるはずだからだ。他の実況者は毎回儀式のようにポケモンを読み上げているようだがそれにわざわざ口を出したりもしない。そういったことは意味のないことだと僕に口出しする権利はないし、口出しすること自体にも意味はない。

 

相手のパーティーに存在するこの世のすべての不運を呼び込むようなあの凍り付いた不気味な顔面は否が応でも目に入ってくる。視聴者はいつでもこの顔面に苦戦を強いられ憎悪を募らせる姿を求めている。毎回同じように猿芝居させられるこっちの身にもなってほしいものだ。やれやれ

 

顔面といえばそもそも「僕」という顔面は、もとから存在していたのか、それとも気づいたら存在していたのかわからないが、断言できることは今この瞬間「僕」の顔面は存在している。あらゆるものは通り過ぎ、誰にもそれをとらえることはできない。僕たちはそんな風に暮らしている。

 

ポケモン実況動画を画面にくぎ付けになって見ているものなどもはやもういない。実況のような何かが絶え間なく耳に流れ込み隙間時間を埋めてくれる、そんな作業用BGMとしての機能しかもたない。だからポケモン実況として本来求められるような状況説明をいちいちしたりはしない。視聴者は何も考えないし、僕も考えるふりだけしていればいい。そのかわり僕は雑談ネタを必ず用意する。それが面白くても面白くなくてもいい、大事なのは何となく一貫性があるようにきこえるかどうかだ。とにかく僕はよどみなくただ機械のようにしゃべることだけに集中する。家族で食卓を囲みながらでもいいしパスタをゆでたりしながらでもいい。女性と寝た後に聞き流してもらうだけでもいい。ただ一つの僕の願いは、動画を再生しスマホ上に広告を流してもらうことでしかない。

 

「オワオワリで~す」僕はそう言って録画を切り深いため息をついた。そうして仕立てのいいコットンのパンツを穿き白いテニスシューズを履いてクラシックジャズバーへと向かった。「ライバロリさんのファンなんです」サンドウィッチを食べていると女の子が近づいてきた。「じゃあ僕の家に来なよ」高専のころから僕はいつでも折りたたみ傘の携帯を忘れない。突然の雨から彼女の身を守りながら僕は彼女を家に迎えた。

 

家にあがるやいなや彼女は僕を求めてきた。「何かお願いを聞いてあげる」そう言って彼女は仰向けになった僕の上に乗った。「なんでもいいのかい?」と、僕は言った。彼女はじっと僕の顔を見て小さくうなづいた。「そうだな」「じゃあキスをしながらちんこをしごいてほしいんだ」

 

***

 

勢いで書きました。筆者はただのライバロリファンでにわかハルキストなのでいじめないでください。あぁぁぁい!